このところ、日によって、寒かったり、暑かったり、ジメジメしたり、たまーにカラッと爽やかだったりと、気候の変動が激しいですね。
その上コロナ禍は依然として継続中ですし、風邪をひかないで毎日生きていくだけでも結構大変なことですよね。
皆様は、もし「あれ!風邪ひいちゃったかも?!」と思った時、どうしていらっしゃいますか?
TVなどのCMでしょっちゅう流れている「早目の○○!」「熱鼻のどに○○が効く!」などのフレーズがどこからともなく脳内に浮かんで、急いで風邪薬を飲んでしまいますか?
又「頭痛がするな」と思ったら「本格的に痛くなる前に飲まなきゃ!」と、いつもの頭痛薬を飲んで、なるべく早く寝ますか?
東洋医学的には、「どんな風邪か」を見極めて、それに合った「適切な漢方薬」を飲み、養生(ようじょう)して回復を図るのが基本です。場合によっては「鍼灸」で速やかに治るよう手助けをすることもあります。
「どんな風邪か」とか「適切な漢方薬」と言われてもピンと来ないかも知れないので、一例を挙げると…
風邪の時に飲む漢方薬としては「葛根湯(かっこんとう)」が有名です。
この葛根湯は、寒気があって、首や肩が凝ったり強ばったりしているような風邪に有効なのですが、熱感が強くて、ノドの痛みが強く、口が渇いているような風邪には効きません。
そのような風邪には「銀翹散(ぎんぎょうさん)」が有効です。
寒気があるか、寒気はなくて熱っぽさがあるか。それによって、飲むべき漢方薬が変わるのです。
東洋医学では、「風邪をひいた」という状態は「外邪(がいじゃ)に侵入され、体内で正気(せいき)と邪気(じゃき)の邪正闘争が始まった」状態と考えます。
「正気」は、生命活動を維持するために必要な働きをしてくれます。
逆に、「正常に生命活動を行わせている何かがある」と考えて、その何かを「正気」と名付けたと考えても良いかも知れません。反対に「邪気」は「正常な生命活動を行わせない何か」ということになります。「正気」を邪魔するような働きをするものです。
人間は、というか、生命体は、外邪に侵入された場合、それを排除しようとする力を持っています。
それが生命活動を維持するために必要だからです。まさに「正気」の発揮される一面です。それを名付けて「自然治癒力」「免疫力」と呼んでいます。
つまり、症状自体は、正気が邪気に勝つために必要な反応であることもあるのです。
例えば、発熱について、先述の二つのパターンの風邪で考えると…
●【葛根湯が有効な、寒気のある風邪の場合】
邪気に「寒(かん)」の性質があるので、発熱することでその邪気と闘う必要がある → 発汗するまで発熱させる必要あり
●【銀翹散が有効な、寒気のない風邪の場合】
邪気に「熱(ねつ)」の性質があるので、口、のどが渇き、水を飲もうとしている → 炎症を鎮め、熱を発散させる必要あり
そういう考えが東洋医学のベースにあるので、「風邪ひいちゃったかも?!」と思った時には、まず「どんな」邪正闘争が行われているかを見極めようとします。それには、症状を細かく把握することが不可欠です。
・寒気があるか、どの辺にどの様に感じる寒気なのか
・熱くてたまらないという感じはあるか、どの辺にどの様に感じる熱さか
・汗は出ているか、どのような汗か
・体のどこか(頭、のど、耳鼻目、首肩、背中、胸、腹、関節、手足など)に痛みがあるか、どんな痛みか
・のどは腫れているか
・のどは乾くか
・痰が出るか、どんな痰か
・鼻水は出るか、どんな鼻水か、鼻は詰まるか
・咳は出るか、どんな咳か
・お通じの状態はどうか
・胃腸の症状はあるか
・吐き気はあるか
など…。
そして、脈、舌、腹、首、背中、顔色、手足、元々の体質などについても細かく診ます。
これらの情報を総合して「今、生命活動を維持するために、体のどの部分で、どのように『正気』は『邪気』を排除しようとしているのか」を具体的に確信を持ってイメージするのです。
その上で「その戦いを助けてあげるようにする」というのが、東洋医学的な考え方です。
「熱があるから熱を下げよう!」ではなく、必要であれば「もう少し熱を出そう!」もあり得るのです。
「正気」が「邪気」を排除するのが大事なのであって、平熱でいることが大事なわけではありません。
「症状を薬によって抑える」ことを目指すのではなく、「邪気」が排除された結果として症状が治まるわけです。
「あれ!風邪ひいちゃったかも?!」と思った時、東洋医学の考え方を取り入れて、せっかくの「正気」の働きを邪魔しないようにしてみてはいかがでしょうか?
適切な漢方薬については、漢方薬局の薬剤師さんや、漢方医の先生にご相談ください。
風邪の症状がしっかり治まったら、戦いの後の弱ったお体をいたわるため、是非、楽効堂にお越しください。お待ちしております!